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GENERAL GUIDE 09

「時価の2分の1以上なら安全」
は本当か

非上場株式を関係者間で売買するとき、「時価の2分の1以上で売れば税務上問題ない」と説明されることがあります。

しかし、これは正確ではありません。時価の2分の1という基準は、一定の場合に、個人である売主の譲渡所得を時価で計算するかどうかに関係する基準です。

買主側の贈与税や法人税まで含めて、取引全体の安全性を保証する基準ではありません。

2分の1以上というだけで安全とは判断せず、売主・買主それぞれの税金と、比較対象となる時価を確認します。

結論――2分の1以上でも安全とは限らない

  • 2分の1基準は、主として個人である売主の所得税に関係する
  • 2分の1未満なら、売主が時価で譲渡したものとみなされることがある
  • 2分の1以上でも、必ず実際の売買価格が認められるわけではない
  • 買主側の贈与税や法人税には、共通する2分の1の安全基準はない
  • 基準と比較する前に、非上場株式の税務上の時価を確認する必要がある

したがって、「2分の1を超えているか」だけで売買価格を決めることは適切ではありません。

「時価の2分の1」という基準はどこから出てくるのか

個人が法人に資産を著しく低い価額で譲渡した場合、所得税法59条により、時価で譲渡したものとみなされることがあります。

ここでいう「著しく低い価額」の具体的な基準は、所得税法施行令に定められています。譲渡の対価が、その資産の時価の2分の1に満たない場合が対象です。

つまり、2分の1基準の直接の根拠は所得税基本通達59-6ではありません。

所得税基本通達59-6は、非上場株式について所得税法59条を適用する際、その株式の時価をどのように評価するかに関係する取扱いです。

「2分の1に満たないか」という判定と、「比較対象となる時価をいくらとするか」は、分けて考える必要があります。

所得税法59条は、売主である個人の所得税の規定

所得税法59条による低額譲渡の問題は、まず売主が個人である場合に生じます。

たとえば、税務上の時価が1億円と判断される非上場株式を、個人株主が法人へ3,000万円で売ったとします。

売買価格は時価の2分の1未満です。この場合、売主が実際に受け取る代金は3,000万円であっても、所得税の計算上は1億円で譲渡したものとみなされる可能性があります。

売主は受け取っていない7,000万円を含めた金額を前提として、株式の譲渡所得を計算することになります。

低い価格で売ったために所得税も低くなるとは限らない点に注意が必要です。

所得税基本通達59-6は非上場株式の時価に関係する

非上場株式には、上場株式のように市場で確認できる取引価格がありません。そのため、所得税法59条を適用するには、まず対象株式の時価を算定する必要があります。

所得税基本通達59-6は、一定の条件のもとで、財産評価基本通達の非上場株式の評価方法を準用する取扱いを示しています。

ただし、相続税や贈与税の申告で使用する評価額を、そのまま売買時の時価として転記すればよいわけではありません。

所得税の評価では、株式を譲渡した個人を基準として株主区分などを判定するため、相続税・贈与税の評価とは適用関係が異なることがあります。

同じ会社の同じ株式でも、誰が保有し、誰へ譲渡するのかによって、確認すべき評価方法が変わり得ます。

時価の2分の1未満で売った場合

個人が法人へ非上場株式を時価の2分の1未満で売った場合、売主側では、原則として時価によるみなし譲渡を検討します。

一方、買主である法人は、時価より低い価格で株式を取得しています。そのため、時価と購入価格との差額について、受贈益などとして法人税の対象になる可能性があります。

※スマートフォンでは、表を横にスクロールしてご覧いただけます。

当事者実際の取引主な税務上の検討
個人である売主時価1億円の株式を3,000万円で売却1億円で譲渡したものとして譲渡所得を計算する可能性
買主法人時価1億円の株式を3,000万円で取得差額7,000万円について受贈益等を認識する可能性

一つの価格差について、売主側と買主側で別々の課税が生じ得るということです。

時価の2分の1以上で売った場合

では、時価1億円の株式を6,000万円で法人へ売った場合はどうでしょうか。

売買価格は時価の2分の1以上であるため、時価の2分の1未満を対象とする所得税法59条の規定には、原則として該当しません。

しかし、そこから直ちに「6,000万円で問題ない」という結論にはなりません。

売主と買主が同族関係にあり、その取引によって売主の所得税負担が不当に減少すると認められる場合には、同族会社等の行為または計算を否認する所得税法157条が問題になる可能性があります。

また、実際の時価が1億円であるなら、買主法人は4,000万円分の経済的利益を受けています。買主側では、売買価格が時価の2分の1以上であっても、受贈益等の検討が必要です。

2分の1以上という事実は、一部の規定に該当しないことを示すにとどまり、売主・買主を含む取引全体の安全性を保証するものではありません。

買主側の課税に共通の2分の1基準はない

買主が法人の場合

法人が時価より低い価格で株式を取得した場合、時価と購入価格との差額について、受贈益などを認識する可能性があります。

法人税の検討では、「購入価格が時価の2分の1以上だから差額を考えなくてよい」という一律の取扱いにはなりません。

買主が個人の場合

個人が別の個人から著しく低い価額で株式を取得した場合、相続税法7条により、時価と支払額との差額を贈与によって取得したものとみなされることがあります。

この「著しく低い価額」には、すべての取引に共通する「時価の2分の1未満」という数値基準が設けられているわけではありません。

個人間売買について、法人への低額譲渡に使われる2分の1基準をそのまま安全基準として用いることはできません。

2分の1と比較する前に、時価を確認する

そもそも、2分の1基準を使うためには、比較対象となる時価が確定していなければなりません。

  • 売主と買主は個人か法人か
  • 売主と買主に親族関係、資本関係または役員関係があるか
  • 売主は対象会社の支配株主に該当するか
  • 売買によって会社の支配関係が変わるか
  • どの税目について時価を判定するのか
  • どの時点の決算数値を使用するのか
  • 株価算定に使用した資料は何か

「株価は1億円だから5,000万円以上で売ればよい」と考えていても、その1億円が今回の所得税上の時価として適切でなければ、2分の1の判定自体が成り立ちません。

まず時価を算定し、その後に売買価格との比較を行うのが正しい順序です。

2分の1基準についてよくある誤解

誤解1 2分の1以上なら売主にも買主にも課税されない

2分の1基準は、すべての当事者と税目に共通する基準ではありません。買主側では、価格差について贈与税や法人税が問題になる可能性があります。

誤解2 所得税基本通達59-6が2分の1基準を定めている

2分の1未満という基準は、所得税法59条とその施行令に関係します。所得税基本通達59-6は、非上場株式の時価の算定に関係する取扱いです。

誤解3 相続税評価額の2分の1以上ならよい

相続税・贈与税の評価額が、今回の譲渡所得の計算に使用する時価と一致するとは限りません。誰の立場で、どの税目について評価するのかを確認する必要があります。

売買前に保存しておきたい資料

低額譲渡の問題は、売買価格そのものだけでなく、その価格を決めた過程も重要です。

  • 株主名簿
  • 売主・買主と対象会社との関係が分かる資料
  • 直近数期の決算書と法人税申告書
  • 株式の取得価額が分かる資料
  • 株価算定書と計算資料
  • 採用した評価方法の理由
  • 株式譲渡契約書
  • 取締役会や株主総会等の議事録
  • 売買価格を決定した経緯の記録

税務調査が始まってから、売買当時の判断過程を再現することは容易ではありません。算定結果だけでなく、採用した前提や検討過程も残しておくことが大切です。

まとめ

「時価の2分の1以上なら安全」という考え方は、非上場株式の税務を正確に表したものではありません。

2分の1基準は、一定の場合に個人である売主へ適用される、所得税法上の低額譲渡の判定基準です。買主側の贈与税や法人税に共通する安全基準ではなく、2分の1以上であっても、当事者関係や取引内容によって別の規定が問題になることがあります。

非上場株式を売買するときは、まず誰から誰への取引かを整理し、税目ごとの時価と売主・買主双方の課税関係を確認する必要があります。

当事務所では、非上場株式の税務評価に加え、取引関係の整理、売主・買主双方の課税確認、売買価格の検討資料の作成まで一体として対応しています。

2分の1という数字だけで判断せず、税目ごとの時価と当事者双方の課税関係を確認することが重要です。

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