TAX VALUE & TRANSACTION PRICE
税務評価額で
売らなければいけないの?
税理士が計算した株価は、1株300円。
買主から提示された価格は、1株5,000円。
これほど違えば、どちらかが間違っているように見えるかもしれません。しかし、税務評価額と実際の売買価格は、そもそも同じ目的で求められた価格ではありません。
税務評価額は、課税関係を確認するための価格です。実際の売買価格は、会社の価値、株主としての立場、取得する支配権、取引条件などを踏まえ、売主と買主が合意する価格です。
税務評価額で売らなければならないわけではありません。
ただし、当事者が合意すれば、何円でもよいわけではありません。
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税務評価額と実際の売買価格の関係を整理するページです
税務評価額より高い、または安い価格で売買するとき、価格差だけで結論を出さずに何を確認するのかを説明します。税務上の株価の具体的な計算方法は、別ページで扱います。
結論――税務評価額は、売買価格を決めるルールではありません
非上場株式には、上場株式のように市場で確認できる株価がありません。
そのため税務では、相続、贈与、株式の譲渡などについて課税関係を判断するため、一定のルールによって株価を求めます。これが税務評価額です。
一方、実際の株式売買では、会社の収益力や資産、将来性だけでなく、次のような事情も価格に影響します。
- 売主が少数株主か、会社を支配する株主か
- 買主が取得後に支配権を得るか
- 配当や株式の換金可能性をどう見るか
- 買主にとって特別なシナジーがあるか
- どのような条件で、どのような交渉が行われたか
税務評価額は、取引前に必ず確認すべき重要な数字です。しかし、その数字が契約価格を自動的に決めるわけではありません。
まず確認するのは「高いか安いか」ではなく「誰から誰へ」か
同じ株式を同じ価格で売買しても、売主と買主の組み合わせによって、税務上の取扱いは変わります。
「税務評価額より高いか、安いか」だけを見ても、税務上の結論は出せません。
まず、誰が売り、誰が買うのかを確認します。そのうえで、売主側と買主側の双方について、どの価格を確認すべきかを整理します。
税務評価300円、売買価格5,000円なら?
税務評価額が1株300円であっても、買主が1株5,000円を提示することはあり得ます。
例えば、売主にとっては配当を受け取るだけの少数持分であっても、買主がその株式を取得することで会社の支配権を得られる場合があります。
また、会社に高い収益力がある、多額の現預金や含み益のある資産がある、買主との間にシナジーが見込まれるといった事情も、提示価格に影響します。
この場合、税務評価額より高いという理由だけで、5,000円が誤りになるわけではありません。確認すべきなのは、価格差そのものよりも、5,000円という価格がどのように形成されたかです。
税務評価とDCFが大きく違うケースを見る →- 買主は何を目的として取得するのか
- 取得後の議決権割合はどうなるのか
- DCF等の第三者算定は行われているか
- 他の株主にも同じ価格を提示しているか
- 過去の売買価格はあるか
- 価格を裏付ける収益力や資産はあるか
こうした事情を整理して、税務評価額との差を説明できるかを検討します。
税務評価5,000円、売買価格300円なら?
反対に、税務評価額が1株5,000円である株式を、1株300円で売買する場合もあります。
売主が少数株主であること、譲渡制限があること、配当が少ないこと、現実に買い手が限られることなどは、実際の価格を考えるうえで重要な事情です。
ただし、それだけで300円という価格が税務上も妥当になるとは限りません。
特に、親族間や同族関係者間などの取引では、低い価格で売ることによって、売主から買主へ価値が移ったと見られる可能性があります。
親族へ売る場合のケースを見る →単に税務評価額と売買価格を比べるのではなく、算定方法、売主の立場、買主との関係、他の買い手や過去の取引価格、その価格で売る合理的な理由を確認します。
安く売る場合に確認すること
税務上確認すべき時価より低い価格で売買した場合、価格差について課税関係が生じることがあります。ただし、誰が誰へ売るかによって、問題になる税金や課税を受ける当事者は異なります。
このページでは「安く売れば必ず贈与になる」といった一律の説明はしません。確認する順序は、次のとおりです。
- 売主と買主を確認する
- 両者の関係を確認する
- 税務上確認すべき時価を整理する
- 実際の売買価格との差を確認する
- 価格差が生じた理由を検討する
- 売主側・買主側の課税関係を確認する
具体的な課税関係は、「誰から誰へ売る?」ページとFAQで取引類型ごとに説明します。
高く売る場合に確認すること
税務評価額より高く売ること自体が、直ちに問題になるわけではありません。支配権の取得、会社の収益力、保有資産、シナジーなどにより、税務評価額を大きく上回る価格が提示されることはあります。
一方で、買主が法人である場合などには、なぜその金額を支払うのか、買主側の経済合理性も重要になります。
- 買主にとって、その株式を取得する意味は何か
- 取得する支配権にどのような価値があるか
- 価格算定の資料があるか
- 取締役会等でどのような検討をしたか
- 売主や買主に特別な関係があるか
- 価格形成の過程を説明できるか
高い価格にも、合理的な理由がある場合があります。その理由を、取引後ではなく取引前に整理しておくことが重要です。
第三者同士なら、自由に決めてよいのでしょうか
利害関係のない第三者同士が、それぞれの判断で交渉して合意した価格は、実際の取引価格を考えるうえで重要な事実です。
しかし、「第三者同士だから、税務上の確認は一切不要」とまでは言えません。
形式上は第三者であっても、一方に特別な事情がある場合や、通常とは異なる取引条件が付いている場合があります。また、株式取得によって支配権が移る場合には、少数株主として保有する株式とは異なる価値が価格に反映されることもあります。
第三者間取引であることは重要な判断材料ですが、それだけで検討を終わらせないことが大切です。
重要なのは、価格差ではなく「価格差の理由」です
税務評価額と売買価格が違うこと自体は、珍しいことではありません。問題は、その違いを説明できないまま取引することです。
予定価格を検討するときは、少なくとも次の事項を一枚の資料に整理します。
- 誰が誰へ売るのか
- 何のための取引か
- 売主と買主はどのような関係か
- 取引前後の持株割合はどう変わるか
- 税務上確認すべき価格はいくらか
- DCF等による評価は必要か
- 過去の取引価格や第三者算定はあるか
- 実際の売買価格との差はなぜ生じるか
- その価格を社内や税務当局へどう説明するか
株価算定書を作成しただけで、税務上の安全が保証されるわけではありません。大切なのは、算定方法、取引条件、価格形成の過程がつながっていることです。
税務評価額と取引価格を、混同しない
税務評価額をそのまま売買価格として使うことが適切な場合もあります。DCF等による株式価値を参考にする場合もあります。買主から提示された価格に合理性がある場合もあります。
どの価格を使うかは、数字だけを並べても決まりません。
- 誰が誰へ株式を動かすのか
- 税務上、どの価格を確認すべきか
- 経済価値の評価が必要か
- 実際の提示価格はどのように形成されたか
- 価格差をどのように説明できるか
この順序で整理し、予定する取引価格を検討します。
税務評価額で売らなければならないわけではありません。
しかし、何円でもよいわけではありません。
必要なのは、今回の取引で、なぜその価格を使うのかを説明できることです。
QUESTIONS
関連する疑問
税務評価額より安く売ると、必ず贈与になりますか
税務評価額より高く売ると問題になりますか
親族間では、どの株価を使いますか
従業員は第三者として扱われますか
少数株主なら配当還元価額で売れますか
第三者同士なら自由な価格で売れますか
株価算定書があれば税務上問題ありませんか
この株を、この相手と、この価格で動かしてよいのか。