TAX VALUATION
非上場株式の
「税務上の株価」はどう決まる?
税理士に非上場株式の評価を依頼したところ、1株800円という結果が出た。
では、この株は800円で売らなければならないのでしょうか。
そうとは限りません。
税務上の株価は、税金を計算し、課税関係を検討するための重要な数字です。しかし、当事者が実際にいくらで売買するかを、そのまま決める価格ではありません。
誰の税務について、何のために株価を求めるのか。
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税務上の評価方法と、その使われ方を確認するページです
類似業種比準方式、純資産価額方式、併用方式、配当還元方式の役割を整理します。実際の売買価格を直接決めるページではなく、取引でどの税務上の株価を確認するかを理解するためのページです。
税務上の株価は
「誰の、何のための株価か」で変わる
非上場株式には、上場株式のように市場で日々成立する価格がありません。そのため税務では、相続、贈与、株式売買などの課税関係を検討するために、一定の評価ルールを設けています。
ただし、非上場株式の税務上の株価が、いつでも一つに決まるわけではありません。
- 相続や贈与のために評価するのか
- 個人が株式を売却するのか
- 法人が株式を売買するのか
- 売主は会社を支配する株主なのか
- 売主は経営に関与しない少数株主なのか
- 買主は取得後に会社を支配するのか
- 売主と買主に親族関係や同族関係があるのか
こうした条件によって、確認する税目、株主の区分、評価方法が変わります。
したがって、決算書の数字を計算式へ入れる前に、今回の株価が誰の税務について、何のために必要なのかを整理する必要があります。
なぜ税務独自の
評価ルールがあるのか
市場価格のない株式について、納税者がそれぞれ自由に評価額を決めれば、同じような会社でも税負担が大きく異なってしまいます。
そこで税務では、課税上の公平性、計算の簡便性、結果の予測可能性を確保するため、非上場株式を評価するための共通ルールを設けています。
税務評価には、税金を計算するための基準として重要な役割があります。一方で、会社の将来性、買主とのシナジー、経営権を取得する効果、個別の交渉条件などをすべて反映して、実際の売買価格を決める制度ではありません。
税務評価は、間違った株価なのではありません。
目的が限定された株価です。
同じ会社の1株でも、
株主の立場によって評価が変わる
非上場株式を評価するときは、その会社の利益や資産だけでなく、その株式を持つ人の立場も確認します。
会社を支配する株主にとって、株式は経営へ関与し、会社の利益や資産に影響を与えるためのものです。
一方、少数株主にとっては、経営に関与できず、配当を受け取ることが株式保有の主な利益となっている場合があります。非上場株式であるため、希望する時期や価格で売却することも容易ではありません。
同じ会社の同じ1株でも、「経営を支配するための株式」と「配当を受けることが中心となる株式」では、その株式が持つ意味が異なります。
この違いを踏まえ、税務では、支配株主等については会社の利益や純資産を反映する原則的な評価方法を使い、一定の少数株主については配当を基礎とする特例的な評価方法を使うことがあります。
ただし、本人の持株割合が低ければ、必ず少数株主として評価されるわけではありません。本人だけでなく、同族関係者を含む株主グループ、会社全体の株主構成、役員であるかどうかなどを確認して判定します。
税務上の主な評価方法は
四つある
類似業種比準方式
評価する会社と類似する業種の上場会社を参考にして株価を求めます。評価会社の利益、配当、純資産などを比較しますが、個別企業の将来キャッシュ・フローを直接予測するDCFとは異なります。
純資産価額方式
会社の資産と負債を税務上のルールに基づいて評価し直し、その純資産から株価を求めます。帳簿上の純資産を株式数で割った金額が、そのまま税務上の純資産価額になるわけではありません。
併用方式
類似業種比準方式と純資産価額方式を、会社規模などに応じた割合で組み合わせます。組み合わせる割合を、評価する人が自由に選ぶことはできません。
配当還元方式
その株式から受け取る配当を基礎として評価します。一定の少数株主などに認められる特例的な方法ですが、少数株主なら必ず適用できるわけではありません。
評価方式だけで売買価格を決めず、今回の取引でどの株価を確認すべきかを整理します。
相続税評価の株価を、
売買にそのまま使えるとは限らない
相続や贈与では、財産評価基本通達に基づいて株価を評価することが基本です。しかし、その評価結果を、個人間売買、個人と法人の売買、法人間売買などへ、そのまま使えるとは限りません。
- 売主が個人か法人か
- 買主が個人か法人か
- 売主と買主に特別な関係があるか
- 取引前に売主がどのような株主だったか
- 取引後に買主が会社を支配するのか
- どの税目について時価を確認するのか
場合によっては、同じ株式について、売主側で確認する税務上の時価と、買主側で確認する税務上の時価が異なることもあります。
過去に相続税申告のための株価を算定していても、その金額が今回の売買に使えるとは限りません。
以前の株価算定書があることと、
今回の取引価格が妥当であることは別の問題です。
税務評価額とDCF、
提示価格が違ってもおかしくない
たとえば、同じ株式について、次のような数字が出ることがあります。
数字だけを見ると、どれかが間違っているように感じるかもしれません。しかし、それぞれの株価は、見ているものが異なります。
税務評価額は、課税関係を検討するための価格です。DCF等による株式価値は、会社が将来生み出すキャッシュ・フローや経済価値などを基礎に算定する価格です。
実際の提示価格には、取得する持株割合、経営権への影響、買主とのシナジー、売主と買主の交渉、契約条件などが反映されます。
それぞれの株価が、何を目的として算定された数字なのかを整理することが必要です。
税務評価額を計算しただけでは、
取引価格は決まらない
税務評価額は、株式売買の課税リスクを検討するうえで欠かせません。しかし、税務評価額が300円だから300円で売らなければならない、ということではありません。
反対に、当事者が合意すれば何円で売買しても問題がない、ということでもありません。
実際の取引では、少なくとも次の事項を整理します。
- 誰が誰へ株式を売るのか
- 売主と買主はどのような関係にあるのか
- 売主側と買主側で、どの税務上の時価を確認するのか
- 必要に応じてDCF等による株式価値を確認するか
- 実際に予定している売買価格はいくらか
- 税務評価額と売買価格に差が生じる理由は何か
- 価格の決定過程や経済合理性をどのように説明するか
税務評価額より高く売る場合も、低く売る場合も、金額の差だけで結論を出すことはできません。取引前後の持株割合、支配権への影響、第三者による算定、他の株主への提示価格、交渉経緯、支払条件などを含めて検討する必要があります。
税務評価額=売買価格、ではありません。
税務評価額で売らなければならないわけではありませんが、何円でもよいわけでもありません。
税務上の株価を計算して終わるのではなく、その株価を今回の取引でどのように使うのかまで整理することが重要です。
この株を、この相手と、この価格で動かしてよいのか。