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GENERAL GUIDE 10

会社が自己株式を買い取る場合の
価格と税金

会社が株主から自社の株式を買い取ることを、自己株式の取得といいます。

退職する役員や少数株主から株式を買い戻す場合、相続した株式を換金する場合、事業承継に向けて株主構成を整理する場合などに利用されます。

ただし、自己株式の取得は、通常の第三者への株式譲渡とは税務上の扱いが異なります。

自己株式取得は、買取価格だけでなく、売主の税金と手取り、会社の資金、取得後の株主構成、会社法上の手続まで確認します。

自己株式の取得で確認する6つの事項

  • 買取価格はいくらか
  • 売主に生じるみなし配当と譲渡所得はいくらか
  • 売主の税引後の手取りはいくらか
  • 会社からいくらの資金が流出するか
  • 取得後の持株割合・議決権割合はどう変わるか
  • 会社法上どのような手続が必要か

「会社に現預金がある」「株主がその価格で納得している」というだけでは、検討は終わりません。

税務評価額が、そのまま買取価格になるとは限らない

非上場株式の自己株式取得でも、税務上の時価を確認する必要があります。

ただし、相続税や贈与税の申告で使用する評価額が、そのまま自己株式の買取価格になるわけではありません。

買取価格を検討するときは、税務上の時価、DCF法などによる経済的な株式価値、過去の取引価格、今回の取得目的などを整理します。

そのうえで、会社と株主が合意する価格が、税務上どのように扱われるかを確認します。

税務評価額と買取価格が異なる場合には、使用した評価方法、価格差が生じた理由、会社と売主の関係を記録しておく必要があります。

売主の受取額は、みなし配当と株式譲渡代金に分かれる

個人株主が発行会社へ株式を売った場合、受け取った金額のすべてが株式の譲渡代金として扱われるとは限りません。

会社から受け取る金額のうち、その株式に対応する資本金等の額を超える部分は、税務上、配当を受け取ったものとみなされることがあります。これが、みなし配当です。

受取額からみなし配当部分を除いた金額が、株式の譲渡収入になります。

※スマートフォンでは、表を横にスクロールしてご覧いただけます。

受取額の区分主な税務上の扱い
取得株式に対応する資本金等の額を超える部分みなし配当
みなし配当を除いた部分株式の譲渡収入

たとえば、会社が個人株主から株式を1,000万円で取得し、その株式に対応する資本金等の額が200万円であったとします。

単純化すれば、800万円がみなし配当、残りの200万円が株式の譲渡収入となります。

株主が1,000万円で株式を売却したからといって、1,000万円全額から取得費を差し引いて譲渡所得を計算するわけではありません。

なお、実際のみなし配当額は、会社の税務上の資本金等の額や発行済株式数などを基に計算します。登記上の資本金だけから判断することはできません。

買取価格だけでなく、売主の手取りを確認する

個人株主の場合、みなし配当と株式の譲渡所得では課税方法が異なります。

みなし配当は原則として配当所得となり、株式の譲渡部分は譲渡所得として計算します。会社には、みなし配当部分について源泉徴収が必要になることもあります。

そのため、自己株式の買取価格が高くても、みなし配当が大きければ、売主の税負担が想定より重くなる可能性があります。

また、株式の取得費が分からない場合には、譲渡所得の計算にも影響します。

  • みなし配当の金額
  • 株式の譲渡収入
  • 株式の取得費
  • 源泉徴収される金額
  • 所得税等を考慮した手取り

第三者へ株式を売る場合と、発行会社へ売る場合とでは、同じ売却価格でも手取りが同じになるとは限りません。

売主が法人の場合には、みなし配当、受取配当等の益金不算入、株式譲渡損益などを法人税上整理します。

会社側では、資金負担と分配可能額を確認する

自己株式の買取代金は、会社の資金から支払われます。

買取価格が高くなるほど会社の現預金が減少するため、取得後の運転資金、借入金の返済、設備投資、納税資金に支障がないかを確認しなければなりません。

また、会社に十分な現預金があっても、その全額を自己株式取得に使えるとは限りません。

会社法上、自己株式の取得に使用できる金額には、分配可能額による制限があります。「資金を用意できる金額」と「法律上支払える金額」は別に確認する必要があります。

税務上の時価と比べて著しく高い価格や低い価格で取得する場合には、会社、売主、残った株主の間で経済的利益が移転していないかという点も問題になります。

取得後は、残った株主の議決権割合が変わる

会社が取得した自己株式には、原則として議決権がありません。

そのため、他の株主が保有する株式数に変化がなくても、自己株式取得後には、残った株主の議決権割合が相対的に上昇します。

たとえば、少数株主の株式を会社が取得した結果、特定の株主の議決権割合が過半数を超えることがあります。

  • 各株主の持株数と議決権割合
  • 同族株主の範囲
  • 経営の支配関係
  • 将来の税務上の株価への影響
  • 取得した自己株式を保有、処分または消却する予定

特定の株主から高すぎる価格で取得すれば、会社財産がその株主へ過度に流出する可能性があります。反対に、低すぎる価格で取得すれば、売主から残った株主へ価値が移転したと評価される可能性があります。

自己株式取得は、会社と売主だけでなく、残る株主にも影響する取引です。

株主との合意だけでは実行できない

自己株式の取得は、会社と売主が価格に合意すれば自由に実行できるとは限りません。

取得方法によって、株主総会等の決議、株主への通知、特定の株主から取得する場合の手続などが異なります。

特定の株主だけを売主として取得する場合には、他の株主が自分も売主に加えるよう求めることのできる手続が問題になることもあります。

  • 定款と株式の譲渡制限
  • 取得する株式数
  • 買取価格と買取総額
  • 必要な株主総会・取締役会等の決議
  • 特定株主から取得する場合の手続
  • 分配可能額
  • 取得後の自己株式の取扱い

必要な会社法上の手続については、弁護士や司法書士と連携して確認します。

実行前に資料をそろえる

  • 株主名簿
  • 取得前後の持株割合・議決権割合
  • 直近数期の決算書と法人税申告書
  • 売主の株式取得費が分かる資料
  • 株価算定書と計算資料
  • 買取価格を決めた理由
  • みなし配当と売主の手取りの試算
  • 過去の株式売買や自己株式取得の記録
  • 分配可能額の計算資料
  • 株主総会・取締役会等の議事録
  • 自己株式取得に関する契約書

税務上の株価、買取価格、みなし配当、会社法上の手続を別々に処理せず、一つの取引として検討過程を残すことが大切です。

まとめ

会社が自己株式を買い取る場合は、株価だけを決めればよいわけではありません。

売主が受け取る金額は、みなし配当と株式の譲渡収入に分かれることがあり、その区分によって税負担と手取りが変わります。

会社側では、買取価格の合理性、取得後の資金負担、分配可能額を確認する必要があります。さらに、残った株主の議決権割合や経済的価値が変化する可能性もあります。

自己株式取得を実行する前に、買取価格、売主の税金と手取り、会社の資金、取得後の株主構成、他の株主への影響、会社法上の手続を一体として確認することが重要です。

当事務所では、非上場株式の税務評価だけでなく、自己株式の買取価格、みなし配当と譲渡所得、売主の手取り、取得後の株主構成まで含めて検討しています。

自己株式取得は、買取価格だけでなく、売主・会社・残る株主への影響まで確認してから実行します。

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