WHO SELLS TO WHOM?

非上場株式の税務は
「誰から誰へ」で変わります

非上場株式の売買では、株価を計算する前に確認すべきことがあります。

誰が、誰に、何のために株式を売るのか。

同じ会社の同じ株式を、同じ1,000円で売る場合でも、親から子、経営者から従業員、少数株主から大株主、個人株主から会社へ売る場合では、確認すべき税務が異なります。

非上場株式の税務は、株価だけを見ても判断できません。

取引当事者によって変わる税務を整理するページです

個人か法人か、親族・同族関係にあるか、少数株主か支配株主かによって、確認すべき時価や課税関係がどう変わるかを扱います。評価方法を選ぶ前に読むページです。

株価を計算する前に
「誰から誰へ」を確認する

最初に確認するのは、売主と買主です。

  • 売主は個人か、法人か
  • 買主は個人か、法人か
  • 売主と買主は親族か
  • 役員や従業員への売却か
  • 同族関係にある者の間の取引か
  • 売主は少数株主か、支配株主か
  • 買主は取得後に会社を支配するのか
  • 発行会社自身による自己株式の取得か

そのうえで、株式を動かす目的も確認します。

事業承継のためなのか。役員や従業員に株式を持ってもらうためなのか。少数株主との資本関係を整理するためなのか。M&Aや完全子会社化のためなのか。

同じ相手との取引でも、目的が違えば、価格を決める際に考慮する事情も異なります。

個人か法人かで、
確認する税務が変わる

売主と買主の組合せは、大きく四つに分かれます。

※スマートフォンでは、表を横にスクロールしてご覧いただけます。

売主買主主に確認すること
個人個人売主の株式譲渡と、低い価格で取得した買主への贈与の問題
個人法人売主個人の譲渡課税と、買主法人が受けた利益または負担した金額
法人個人売主法人の譲渡損益と、買主個人が受けた経済的利益
法人法人双方の法人における譲渡損益、取得価額、寄附・受贈益等の問題

たとえば、時価より著しく低い価格で個人から個人へ売れば、買主が受けた利益について贈与税が問題になる可能性があります。親族へ売る場合のケースを見る →

個人から法人へ著しく低い価格で売れば、売主側で実際の売買価格とは異なる金額を基準に課税される可能性があります。買主法人側でも、時価との差額について検討が必要です。

法人から個人へ低い価格で売る場合には、買主が役員、従業員、株主、その他の関係者のどれに当たるかによって、その経済的利益の取扱いが変わる可能性があります。

法人間取引でも、価格が時価と大きく異なれば、寄附や受贈益などが問題になることがあります。

ただし、実際の税務は、この四つに分類するだけでは決まりません。当事者の関係、持株割合、取引目的などを含めて確認する必要があります。

親族・役員・従業員への売却は、
価格差に注意する

親族や役員・従業員への売却では、「身内だから安く譲りたい」「後継者が買える価格にしたい」「従業員に株式を持ってもらいたい」という事情があります。

しかし、買いやすい価格にすることと、税務上問題のない価格であることは別の問題です。

たとえば、時価1,000円の株式を100円で売れば、売買代金を実際に支払っていても、買主は差額に相当する経済的利益を受けています。形式が売買であれば、贈与や給与などの問題が必ずなくなるわけではありません。

一方で、親族や従業員に売るなら、税務評価額をそのまま売買価格にすればよいとも限りません。

確認すべき評価額は、当事者の関係、株主としての立場、持株割合、適用される税目などによって変わる可能性があります。

  • 税務上確認すべき時価
  • 実際に予定している売買価格
  • 価格差が生じる理由
  • 取引前後の持株割合
  • 配当や株式譲渡に関する制限
  • 退職時の株式の取扱い
  • 売買代金の支払方法

契約書や送金記録を残すことも大切です。それだけでなく、なぜその価格にしたのかを説明できるようにしておく必要があります。

少数株主から大株主へ売ると、
株式の意味が変わる

少数株主から大株主へ株式を売る場合、売主と買主では、その1株が持つ意味が異なることがあります。

少数株主にとっては、経営に関与できず、配当も限定され、自由に売却することも難しい株式かもしれません。一方、大株主にとっては、その株式を取得することで持株割合が上がり、経営権が強まったり、完全子会社化に近づいたりする可能性があります。

その結果、少数株主側で算定される税務評価額、会社全体の経済価値から考えた株価、大株主が実際に提示する買取価格が、大きく異なることがあります。

少数株主側の税務評価額が300円であっても、それだけを理由に300円で売らなければならないとは限りません。反対に、買主にとって必要な株式だからといって、何円で買っても問題がないわけでもありません。

  • 取得によって持株割合がどう変わるのか
  • 支配権にどのような影響があるのか
  • 他の株主にはいくらを提示しているのか
  • DCF等の第三者算定を行っているか
  • どのような交渉を経て価格が決まったのか

ここでは、税務評価と企業価値評価、実際の提示価格を一緒に見る必要があります。

会社が自社株を買い取る場合は、
別の論点がある

株式を発行した会社自身が、株主から株式を買い取ることを自己株式の取得といいます。少数株主の整理、事業承継、相続後の株式換金などで利用される方法です。

自己株式の取得では、一般的な第三者への株式売却とは異なる税務上の取扱いがあります。

売主が受け取る金額についても、すべてが単純な株式の譲渡代金として扱われるとは限りません。取引内容によっては、みなし配当が生じる可能性があります。

また、確認するのは税務だけではありません。

  • なぜ会社がその株式を買い取るのか
  • なぜその株主から買い取るのか
  • 会社の資金で買い取る合理性があるか
  • 買取価格をどのように決めたのか
  • 取得後の持株割合がどう変わるのか
  • 他の株主との公平性に問題はないか
  • 必要な会社法上の手続を行っているか

税務上の株価を計算しただけでは、自己株式取得の妥当性を判断することはできません。必要に応じて、弁護士等と連携して会社法上の手続も確認します。

会社が自社株を買い取るケースを見る →

売主と買主で
「税務上の時価」が違うことがある

非上場株式の取引では、売主側で確認する税務上の時価と、買主側で確認する税務上の時価が、必ず一致するとは限りません。

同じ株式なのに、二つの時価が出てくる。

初めて見る方には、不自然に感じられるかもしれません。

しかし、税務上の評価では、株式そのものだけでなく、その株主が会社を支配する立場にあるのか、少数株主なのかといった事情も考慮されます。また、所得税、法人税、相続税・贈与税では、確認する目的や取扱いが異なります。

そのため、単に「この会社の株価はいくらか」と考えるのではなく、次のように分けて確認します。

  • 誰の税務を検討しているのか
  • どの税目について確認しているのか
  • その人は取引前にどのような株主なのか
  • 取引後に誰が会社を支配するのか
  • その評価額を何のために使うのか

売主側の時価と買主側の時価が違う場合には、どちらか一方だけを見て取引価格を決めることはできません。双方の課税関係を並べたうえで、実際の売買価格との関係を検討する必要があります。

一つの株価だけで
取引を判断しない

非上場株式の取引で、最初から類似業種比準方式、配当還元方式、純資産価額方式やDCFなどの計算を始めても、その数字を何に使うのかが決まっていなければ、取引価格の判断にはつながりません。

まず整理するのは、次の事項です。

  • 誰が売るのか
  • 誰が買うのか
  • 売主と買主はどのような関係か
  • 取引前後の持株割合はどうなるか
  • 株式を動かす目的は何か
  • いくらで取引する予定か
  • 売主側と買主側で、どの時価を確認する必要があるか
  • 税務評価額と売買価格が違う理由を説明できるか

そのうえで、必要な順に株価を確認します。

  1. 売主と買主それぞれの税務上の時価
  2. 必要に応じたDCF等による株式価値
  3. 実際の提示価格や交渉条件
  4. 複数の株価に差が生じる理由
  5. 予定する取引価格についての考え方

税務評価額を計算することは重要です。

税務評価額=売買価格、ではありません。
税務評価額で売らなければならないわけではありませんが、何円でもよいわけでもありません。

まず「誰から誰へ」を整理し、その取引ではどの株価を、何のために確認するのかを明らかにすることが重要です。

参考資料

当事者の関係による税務上の取扱いや、非上場株式の評価方法については、次の公的資料をご確認ください。

この株を、この相手と、この価格で動かしてよいのか。

株式を動かす前に、
売主と買主双方の株価を整理しませんか。

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