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GENERAL GUIDE 07

非上場株式の譲渡にかかる税金|個人・法人4つの組合せ

非上場株式の譲渡では、まず売主と買主が個人か法人か、買主が株式の発行会社かを確認します。個人の譲渡益の税金、法人の売却損益、安く取得した買主の課税を、取引関係ごとに整理します。

親から子へ売るのか、個人株主から会社へ売るのか、会社から役員へ売るのかによって、確認すべき税金が変わるからです。

売主には譲渡所得や法人税、買主には贈与税、給与所得、配当所得、法人税などが生じる可能性があります。

非上場株式の売買では、株価を計算する前に「誰が誰に売るのか」を整理することが出発点です。

個人が非上場株式を売る場合の税率と計算

国内居住の個人が通常の非上場株式を売る場合は、原則として一般株式等の譲渡所得等として申告分離課税の対象になります。2026年分の基本税率は、所得税・復興特別所得税・住民税を合わせて20.315%です。

譲渡益 = 売却代金 − 取得費 − 譲渡に要した費用

売却代金そのものに20.315%を掛けるわけではありません。例えば、通常の売却で代金500万円、取得費200万円、譲渡費用10万円、他の損益や特例がない場合、譲渡益は290万円、税額の単純計算は589,135円です。実際の申告では端数処理等を確認します。

低額譲渡のみなし譲渡や発行会社への売却、非居住者の取引等では別の確認が必要です。一般株式等と上場株式等の損益は、原則として相互に通算できません。国税庁:株式等を譲渡したときの課税

売主・買主別:個人と法人の4つの組合せ

下表の贈与税・受贈益等は、主に時価との差額や経済的利益がある場合の確認事項です。通常の対価で購入しただけで、買主に必ず課税されるという意味ではありません。

個人と法人の間の売買は、次の4つに分けられます。

※スマートフォンでは、表を横にスクロールしてご覧いただけます。

売主買主売主側の主な確認事項買主側の主な確認事項
個人個人株式の譲渡所得低額取得による贈与税
個人法人譲渡所得、時価によるみなし譲渡受贈益など
法人個人売却損益、差額の取扱い給与所得、配当所得など
法人法人売却損益、寄附金など受贈益など

この表は基本的な整理です。

実際の課税関係は、売買価格だけでなく、売主と買主の関係、持株割合、取引目的などによって変わります。

株価だけを先に決めてはいけない

非上場株式には、すべての取引に共通する一つの時価があるわけではありません。

同じ会社の株式でも、所得税、贈与税、法人税のどれを検討するかによって、確認すべき評価方法や取扱いが異なることがあります。

そのため、実務では次の順序で整理します。

  1. 売主と買主が個人か法人か
  2. 親族、株主、役員、従業員、関係会社などの関係があるか
  3. 取引時点における税務上の時価はいくらか
  4. 実際の売買価格との差額が誰の利益になるか
  5. 売主側と買主側にどのような課税が生じるか

「相続税評価額で計算したから大丈夫」「契約書を作ったから問題ない」とは限りません。

算定した株価を、今回の取引にどのように使うかまで検討する必要があります。

個人から個人へ売る場合

個人株主が別の個人へ非上場株式を売る場合、売主には原則として株式の譲渡所得が生じます。

基本的には、売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いて譲渡所得を計算します。

一方、買主が時価より著しく低い価格で株式を取得した場合は、贈与税が問題になります。時価と実際に支払った金額との差額について、売主から贈与を受けたものとみなされる可能性があるためです。

たとえば、税務上の時価が1株5,000円と判断される株式を、親から子へ1株1,000円で売った場合、代金を実際に支払っていても、差額が贈与として扱われることがあります。

個人間の売買では、売主の譲渡所得だけでなく、買主の贈与税まで確認する必要があります。

個人から法人へ売る場合

買主が発行会社なら「みなし配当」も確認

株式を発行した会社に買い取ってもらう自己株式取得では、受取額の一部が配当所得とみなされることがあります。売却代金の全額を通常の譲渡所得として計算できるとは限りません。自己株式取得の価格と税金で、通常の売却との違いを確認してください。

以下は、発行会社以外の法人への通常の売却を中心とした説明です。

個人が法人へ非上場株式を売る場合、個人である売主には株式の譲渡所得が生じます。

ただし、時価より著しく低い価格で法人へ売った場合は、実際に受け取った代金ではなく、時価で譲渡したものとして所得を計算することがあります。

特に、売却価格が時価の2分の1未満である場合には、所得税法上の低額譲渡の規定を確認しなければなりません。

売主は少ない代金しか受け取っていないのに、税務上は時価相当額を収入として課税される可能性があるということです。

買主である法人についても、時価と購入価格との差額が受贈益などとして法人税の対象になる可能性があります。

この取引では、個人側の所得税と法人側の法人税を切り離さず、双方を確認することが重要です。

なお、時価の2分の1以上であれば、すべての税務上の問題を回避できるという意味ではありません。この点は別の記事で詳しく取り上げます。

法人から個人へ売る場合

法人が保有する非上場株式を個人へ売る場合、法人側では株式の売却損益を計算します。

法人が時価より低い価格で売ったときは、時価と売買価格との差額を、買主である個人へ与えた利益として扱う可能性があります。

この差額が個人側でどのような所得になるかは、法人と買主の関係によって変わります。

買主が役員や従業員であり、その立場を理由に安く取得したのであれば、給与として課税される可能性があります。株主としての立場に基づいて利益を受けたのであれば、配当としての課税を検討します。

法人から受けた経済的利益は、個人から受けた贈与とは異なり、原則として贈与税ではなく所得税の問題です。

同じ個人が同じ価格で株式を取得しても、売主が個人か法人かによって、関係する税金が変わります。

法人から法人へ売る場合

法人から別の法人へ非上場株式を売る場合は、売主法人と買主法人の双方で法人税を確認します。

時価より低い価格で売った場合、売主法人では、時価で譲渡したものとして売却損益を計算したうえで、時価と売買価格との差額が寄附金として扱われる可能性があります。

買主法人では、その差額が受贈益として課税所得に含まれる可能性があります。

両社に資本関係や人的関係がある場合には、なぜその価格で取引したのか、どちらの法人へ利益が移ったのかを説明できるようにしておく必要があります。

なお、完全支配関係がある法人間などでは、別の取扱いが適用されることがあります。

親族や同族関係者だから課税されるのではない

親族間や同族関係者間の取引であるという理由だけで、直ちに贈与税や法人税が課されるわけではありません。

問題になるのは、時価と実際の売買価格に差があるか、その差額によって誰が利益を受けたのかという点です。

ただし、親族、同族会社、役員、株主などの間では、独立した第三者間の取引よりも自由に価格を決めやすくなります。そのため、税務上も利益移転の有無を慎重に確認される可能性があります。

事業承継のため、少数株主を整理するため、役員に株式を持たせるためなど、取引に目的があっても、それだけで時価との差額に対する課税がなくなるとは限りません。

取引目的と税務上の価格の両方を説明できるようにしておくことが重要です。

売主側と買主側で評価方法を確認する

評価の前提は、非上場株式の税務評価額・企業価値・売買価格の違いに整理しています。相続税・贈与税の評価方法と売買時の時価との関係を確認してください。

非上場株式の取引では、売主側の所得税を計算するための時価と、買主側の贈与税や法人税を検討するための時価が、必ずしも同じ考え方になるとは限りません。

また、相続税申告で使う評価額を、そのまま売買価格として採用できるとも限りません。

一つの株価算定書を作成して終わりにするのではなく、その株価が誰のどの税金を検討するためのものかを明確にする必要があります。

売買前に残しておきたい資料

当事者と関係を示す資料

  • 株主名簿
  • 売主と買主の親族・資本・役員関係が分かる資料
  • 売買後の持株割合が分かる資料

株価の根拠を示す資料

  • 直近数期の決算書と税務申告書
  • 株式の取得価額が分かる資料
  • 株価算定書とその基礎資料
  • 過去の株式売買や自己株式取得の記録

取引の意思決定を示す資料

  • 株式譲渡契約書
  • 取締役会・株主総会等の議事録
  • 取引目的と価格決定理由を記録した資料

税務調査が始まってから、当時の価格決定理由や前提資料を再現することは容易ではありません。取引時点の資料を残しておくことが大切です。

まとめ

非上場株式の売買では、株価だけを見て税金を判断することはできません。

最初に「誰が誰に売るのか」を確認し、売主と買主の関係、税務上の時価、実際の売買価格との差額を整理します。そのうえで、売主側と買主側の双方について、所得税、贈与税、法人税のどれが関係するかを検討します。

特に、親族、同族会社、役員、株主などの関係者間で株式を移す場合は、価格を決める前の確認が重要です。

当事務所では、非上場株式の税務評価だけでなく、誰から誰への取引なのかを踏まえた課税関係の整理、株価の検討、価格決定資料の作成まで一体として対応しています。

株価を計算して終わりではなく、その株価を今回の取引にどう使うかまで確認します。

この株価で取引してよいか相談する

売主・買主が個人か法人か、買主が発行会社か、取引前後の持株割合、予定価格をお知らせください。取引関係に応じた課税と評価方法を整理します。

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参考情報

2026年10月13日更新。個別の課税関係は、取引時点の制度、株主構成、当事者の関係、評価の前提によって異なります。