CASE 04
親族へ非上場株式を売るとき、
いくらにすればよい?
後継者である子へ、自社株式を売りたい。
贈与ではなく売買にして、できるだけ負担を抑えて承継させたい。
このようなとき、いくらで売ればよいのでしょうか。
相続税評価額を使えばよいのか。
親族間で合意できれば自由に決めてよいのか。
安く売ると贈与になるのか。
必要なのは、一つの株価を機械的に当てはめることではありません。当事者間で決める取引価格と、課税関係を判断するための税務上の時価を分けて確認する必要があります。両者に差がある場合には、その理由だけでなく、売主と買主にどのような課税上の影響が生じるかも検討します。
相続税評価額なら安全、
親族間なら自由とは限りません
親族への株式売却では、相続税評価額で売れば必ず問題がないとは限りません。一方で、親族間だから自由な価格で売れるわけでもありません。
売主と買主の関係、取引後の持株割合、代金の支払能力などを踏まえて、予定価格を選んだ理由を整理する必要があります。
最初に、売主と買主の
立場を確認します
同じ親族間の売買でも、次のような取引があります。
- 親から子へ売る
- 経営者から後継者へ売る
- 兄弟姉妹間で売る
- 個人から親族が経営する会社へ売る
- 会社から親族個人へ株式を移す
売主と買主が個人か法人かによって、課税関係や確認すべき税務上の時価が変わることがあります。
また、取引前後の持株割合によって、同じ会社の同じ株式でも、株主としての立場が変わる場合があります。
まずは「親族への売却」と一括りにせず、誰が誰へ株式を移すのかを明確にします。
売買にすれば贈与の問題が
なくなるとは限りません
契約書を作り、代金を支払えば、形式上は売買になります。
しかし、税務上確認すべき時価と比べて著しく低い価格で売買した場合には、売主または買主に課税上の問題が生じる可能性があります。
反対に、相続税評価額より高い価格で売買する場合にも、その価格を採用する理由や、売主・買主への税務上の影響を確認する必要があります。
重要なのは、売買という形式だけではありません。
- その価格をどのように決めたのか
- 価格差によって誰に利益が移るのか
- 売主と買主にどのような税務上の影響があるのか
まで確認します。
相続税評価額を、そのまま
売買価格にしてよいとは限りません
非上場株式には、市場で確認できる一つの株価がありません。
相続や贈与で使われる税務上の株価と、株式売買で確認すべき税務上の時価は、必ずしも同じではありません。
すでに相続税評価額が算定されている場合でも、次の点を確認します。
- 何のために算定された株価か
- 誰の立場から算定された株価か
- どの時点を基準にした株価か
- 予定する売買に使える株価か
- 売買価格との差を説明できるか
「税理士が計算した株価だから、その金額で売ればよい」とは限りません。
算定された数字の目的と前提を確認したうえで、今回の売買価格を検討します。
株式を取得した後、
何が変わるかを確認します
親族への株式売却は、財産の移転であると同時に、事業承継の一部でもあります。
そのため、取引前後の持株割合や支配関係を確認します。
- 後継者の持株割合は何%になるのか
- 議決権の過半数を取得するのか
- 現経営者は何%を残すのか
- ほかの親族株主との関係はどうなるのか
- 残りの株式を将来どのように移すのか
取得する株式数が同じでも、少数株主のままなのか、会社を支配できるようになるのかによって、取引の意味は異なります。
買主が株式の取得によって何を得るのかも、価格を検討するための重要な前提です。
買主が本当に代金を
支払えるかも重要です
親族への株式売却では、買主である後継者が十分な資金を持っていないことがあります。
その場合、株価だけを決めても取引は実行できません。
- 代金を一括で支払えるか
- 分割払いにする必要があるか
- 支払資金をどのように準備するか
- 約定どおり支払いを続けられるか
- 売主から買主へ資金が戻っていないか
税務上説明できる価格であっても、買主が支払えなければ現実的な売買価格とはいえません。
株価と支払能力の両方を見て、実行可能な取引かどうかを検討します。
売買以外の方法とも
比較します
親族や後継者へ株式を移す方法は、売買だけではありません。
- 贈与する
- 相続まで保有する
- 売買と贈与を組み合わせる
- 複数回に分けて移す
- 会社が自己株式として買い取る
売買価格を低くすることだけを考えるのではなく、税負担、資金負担、経営権を移す時期などを含めて比較する必要があります。
検討した結果、今回の目的には売買以外の方法が適していることもあります。
最初から売買を前提にするのではなく、何のために株式を移すのかを確認して方法を選びます。
予定価格と、その価格を
選んだ理由を残します
親族間では、当事者同士が価格に納得していても、それだけで税務上の合理性を説明できるとは限りません。
取引前に、少なくとも次の事項を整理します。
- 売主と買主の関係
- 株式を移す目的
- 税務上確認した株価
- 取引前後の持株割合
- 買主が取得する権利や支配力
- 代金の支払能力と支払方法
- 売買以外の方法と比較した結果
- 最終的な価格を決めた経緯
税務上の時価と実際の売買価格に差がある場合には、なぜ差が生じたのかを記録するとともに、その差額について売主と買主にどのような課税問題が生じるかを確認します。
取引目的や価格決定の理由を記録したからといって、実際の売買価格がそのまま税務上も認められるとは限りません。取引を実行する前に、価格の根拠と課税関係の両方を整理しておくことが大切です。
親族への株式売却は、
株価だけでは決められません
親族への株式売却では、できるだけ負担を抑えて承継させたいという事情があります。
親族間の売買でも、実際の取引価格は、取引目的、取得する権利、支払条件などを踏まえて当事者が決めます。ただし、その取引価格と、所得税や贈与税の課税関係を判断するための税務上の時価は別のものです。当事者が合意した価格や、経済価値を基に決めた価格が、そのまま税務上も認められるとは限りません。
しかし、安い価格を選ぶことだけが解決策ではありません。
誰が誰へ売るのか。
取引後に支配関係はどう変わるのか。
買主は代金を支払えるのか。
売買以外に適した方法はないのか。
これらを確認したうえで、税務上の株価と予定価格を比較し、その価格を選ぶ理由を整理する必要があります。
当事務所では、親族・同族関係、持株割合、支払条件、税務上の株価、ほかの承継方法を踏まえ、今回の株式売却をどのように進めるべきか検討します。
相続税評価額で売ってよいか分からない段階でも構いません。
まずは、売主、買主、株式数、予定価格、取引の目的を分かる範囲でお知らせください。
参考資料
親族間の低額譲渡や非上場株式の評価方法については、次の公的資料をご確認ください。
親族や後継者へ株式を売りたいが、相続税評価額でよいか分からない。
親族へ売る株価を相談する
売主・買主、持株割合、支払能力、ほかの承継方法との比較から整理します。
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