CASE 01
税務評価300円、DCF5,000円。
いくらで売る?
この株は、いくらで売ればよいのでしょうか。
三つの数字から一つを、機械的に正解として選ぶ問題ではありません。
それぞれの株価が何のために求められたのかを確認し、今回の取引でどう使うかを考える必要があります。
※本記事の会社、株主構成および金額は、考え方を説明するための例です。300円と5,000円は、
同じものを測っていません
300円が配当還元方式による評価額であれば、少数株主の立場や配当を基礎として求めた税務上の価格です。
一方、DCFによる5,000円は、会社が将来生み出すと予測されるキャッシュ・フローなどから会社の経済価値を求め、それを1株当たりに換算した価格です。
同じ会社の同じ1株でも、評価の目的、株主の立場、計算の前提が違えば、結果も違います。
したがって、300円だから安く、5,000円だから正しいという関係ではありません。
まず確認するのは、300円が誰の、何の税金を検討するための評価なのか、5,000円がどのような事業計画や評価前提から算定されたのかです。
買主にとって、その1株には
別の意味があるかもしれません
少数株主が保有する1株と、大株主が買い取る1株では、その株式が持つ意味が異なることがあります。
買主は、その株式を取得することによって、次のような効果を得るかもしれません。
- 過半数を確保する
- 重要な議決権割合へ近づく
- 完全子会社化を進める
- 経営上の意思決定を行いやすくする
この場合、買主が少数株主側の税務評価額を上回る価格を提示すること自体は、直ちに不自然ではありません。
ただし、買主にとって必要な株式だからといって、何円で買っても問題がないわけではありません。取得前後の持株割合、買主が得る権利や経済的効果、他の株主への提示条件などを確認する必要があります。
提示価格2,000円は、
なぜ2,000円なのでしょうか
税務評価額300円とDCF5,000円の間にあるから、2,000円が妥当になるわけではありません。
重要なのは、2,000円という提示価格がどのように決められたかです。
- 第三者による株価算定
- 買主が取得する支配権
- 完全子会社化などによる効果
- 買主とのシナジー
- 他の株主に対する提示価格
- 売主と買主の交渉経緯
これらを確認し、300円や5,000円との差を説明できるかを検討します。
2,000円が300円より高いという理由だけで、高すぎるとはいえません。反対に、5,000円より低いという理由だけで、安すぎるともいえません。
売主側の300円だけでは、
税務の検討は終わりません
非上場株式の売買では、誰が売り、誰が買うのかによって課税関係が変わります。
売主が個人で買主が法人なのか、双方に同族関係があるのか、売主と買主がそれぞれどのような株主の立場にあるのかを確認します。
同じ取引でも、売主側と買主側で確認すべき税務上の時価が異なることがあります。
そのため、売主側で300円という評価額が出ていても、それだけで2,000円による取引の税務上の検討が終わるわけではありません。
売主側と買主側を分けて課税関係を確認し、実際の取引価格との差をどう説明するかを整理します。
この例では、2,000円を
どう考えるのでしょうか
この例では、2,000円は取引価格の検討対象になり得ます。しかし、その理由は、300円と5,000円の中間だからではありません。
- 300円は少数株主側の税務評価である
- 5,000円は一定の前提に基づく会社全体の経済価値である
- 買主は取得によって持株割合や支配力を高める
- 2,000円は第三者算定や他株主への提示条件とも整合している
- 売主側と買主側の税務上の影響を確認している
といった事情を総合して検討します。
この条件では2,000円を中心に検討します。
その理由はA・B・Cです。
条件と資料が揃えば、このようなところまで見解を示すことができます。
税務評価額で売らなければならないわけではありません。しかし、何円でもよいわけではありません。
必要なのは、三つの数字から一つを選ぶことではなく、数字が違う理由を整理し、予定価格を説明できるようにすることです。
参考資料
税務上の評価方法や低額譲渡の詳しい内容は、次の公的資料をご確認ください。
税務評価とDCFが大きく違う。相手から、その間の価格を提示された。
この株価で取引してよいか相談する
どの数字を使えばよいのか分からない段階で構いません。誰が誰へ、何のために株式を動かすのかを確認し、複数の株価と予定価格の関係を整理します。
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