記事一覧 / 一般解説記事

GENERAL GUIDE 02

純資産価額方式とは?
会社に資産があれば、
その株価で売れるのか

会社には多額の現預金や土地がある。純資産価額方式で計算した株価も高い。それなのに、相手から提示された買取価格は大幅に低い。

この場合、純資産価額と提示価格のどちらが正しいのでしょうか。

純資産価額方式は、会社が保有する財産を基礎として非上場株式を評価する重要な方法です。しかし、そこで計算された株価が、そのまま実際の売買価格になるとは限りません。

税務上の株価と実際の売買価格を考えるためには、まず純資産価額が何を表しているのかを理解する必要があります。

純資産価額方式は、会社に蓄積された財産から株価を求めます

純資産価額方式は、評価時点における会社の資産から負債を差し引き、一株当たりの株価を求める方法です。

大まかな計算の構造は、次のようになります。

相続税評価額による資産
- 負債
- 評価差額に対する法人税額等相当額
= 純資産価額

この純資産価額を株式数で割って、一株当たりの価額を求めます。

会社を実際に清算して株主へ分配される金額を計算するものではありませんが、会社にどの程度の財産が蓄積されているかを反映する評価方法です。

決算書の純資産を
株式数で割るだけではありません

例えば、決算書の純資産が1億円、株式数が1万株であっても、直ちに一株1万円になるわけではありません。

決算書には、原則として資産が会計上の帳簿価額で計上されています。一方、純資産価額方式では、資産を税務上必要な価額へ置き換えます。

特に確認が必要になるのは、次のような項目です。

  • 取得時から価格が変動している土地
  • 上場株式や投資信託などの有価証券
  • 解約返戻金のある生命保険
  • 回収可能性に問題のある貸付金や売掛金
  • 帳簿に計上されていない債務
  • 評価時点までに行われた配当、増資、資産売却など

長年保有している土地や有価証券に含み益があれば、税務上の資産価額が帳簿価額を上回ることがあります。

反対に、回収できない債権や未計上の債務があれば、決算書の純資産をそのまま使うことはできません。

純資産価額方式は計算式自体よりも、資産と負債の内容を正しく把握する作業が重要です。

利益が少なくても
株価が高くなることがあります

純資産価額は、現在の利益だけで決まるものではありません。

例えば、次のような会社では、本業の利益が少なくても純資産価額が高くなることがあります。

  • 過去の利益を長期間社内に蓄積している
  • 値上がりした土地を保有している
  • 現預金や有価証券を多く保有している
  • 借入金などの負債が少ない
  • 本業の規模に比べて事業外資産が多い

業績が低迷していても、過去に蓄積した財産がなくなるわけではありません。

そのため、「利益が少ないから株価も安いはずだ」と考えると、純資産価額との間に大きな差が生じることがあります。

どの会社、どの株主に
使うかを先に確認します

純資産価額方式を使うかどうかは、単に会社に資産が多いかどうかだけでは決まりません。

まず、株式を取得する人が同族株主等に該当するか、同族株主以外の株主に該当するかを確認します。株主の区分によっては、純資産価額方式ではなく配当還元方式が使われることがあります。

同族株主等が取得する株式については、会社規模に応じて、類似業種比準方式、純資産価額方式、または両者を組み合わせた方式が用いられます。

さらに、土地保有特定会社、株式等保有特定会社、開業後間もない会社、休業中の会社などでは、通常とは異なる取扱いになることがあります。

したがって、計算方法を選ぶ前に、次の事項を確認する必要があります。

  • 誰が株式を取得するのか
  • 取得前後の持株割合はどうなるのか
  • 会社規模はどの区分になるのか
  • 会社の資産構成に特殊性がないか

会社に資産があっても、少数株主が自由に使えるわけではありません

純資産価額が高い会社でも、少数株式の売買価格が同じ水準になるとは限りません。

会社に1億円の現預金があっても、少数株主がその一部を自由に引き出せるわけではありません。資産の売却、配当、役員報酬などの方針を決める権限も、通常は支配株主や経営陣にあります。

また、非上場株式には市場がなく、買い手を簡単に見つけられないことがあります。譲渡制限があれば、希望する相手へ自由に売却できない場合もあります。

したがって、会社が保有する純資産の価値と、少数株主がその株式から実際に得られる経済的価値は、必ずしも一致しません。

一方、株式を取得することで会社の支配権を得られる場合は、資産の利用や処分、配当方針などに影響を与えられます。その場合には、会社が保有する財産の価値が売買価格へ強く反映されることがあります。

同じ会社の株式でも、何%を取得するのかによって、価格の考え方が変わるのです。

類似業種比準価額との差には、会社の特徴が表れます

類似業種比準方式は、配当、利益、純資産を上場会社の株価水準と比較する方法です。会社の収益力や配当実績が株価へ影響します。

これに対して純資産価額方式は、会社が蓄積してきた財産を直接的に反映します。

  • 類似業種比準価額:会社の「稼ぐ力」も踏まえた評価
  • 純資産価額:会社に「蓄積された財産」を中心とした評価

純資産価額が類似業種比準価額より高い場合は、土地、有価証券、現預金、過去の利益蓄積などが影響している可能性があります。

重要なのは、低い方を都合よく選ぶことではありません。税務上適用される評価方法を確認したうえで、なぜ二つの株価に差が生じたのかを分析することです。

純資産価額は売買価格を考えるための重要な基準です

純資産価額方式で一株1万円と算定されたからといって、必ず一株1万円で売買しなければならないわけではありません。

実際の売買では、純資産価額に加えて、次の事項を検討します。

  • 会社の将来の利益やキャッシュフロー
  • 今後期待できる配当
  • 保有資産の換金可能性
  • 取得する株式の持株割合
  • 経営権や拒否権の有無
  • 株式の譲渡制限
  • 売主と買主の関係
  • 相手から提示された価格の根拠

純資産価額は重要な判断材料ですが、実際の取引価格を自動的に決める答えではありません。

必要なのは、税務上の純資産価額、株式が持つ経済的価値、実際の提示価格を分けて確認し、その差を説明できるようにすることです。

会社に資産があるから高い。少数株式だから安い。

どちらか一方だけで結論を出すのではなく、誰が誰から何株を取得し、取引後に何を得るのかまで確認して、予定する取引価格を検討します。

参考資料

※本記事は、相続税・贈与税における一般的な評価方法を説明したものです。実際に適用される評価方法および課税関係は、会社、株主、取引目的、評価時点等によって異なります。

純資産価額は計算できた。しかし、その価格で売買してよいか分からない。

この株価で取引してよいか相談する

誰が誰へ、何のために株式を動かすのかを確認し、税務評価、DCF等による株式価値、実際の提示価格の関係を整理します。

無料の初回打ち合わせを申し込む