GENERAL GUIDE 19

非上場株式の売買代金を分割払いにしてよい?―代金を受け取る前に税金がかかる場合

「非上場株式を1億円以上で売ることになりましたが、買主は一括で払えません。頭金を受け取り、残りを数年かけて払ってもらうことはできますか。税金も、代金を受け取った年ごとに払えばよいでしょうか」

非上場株式の事業承継や株主整理では、このような相談があります。

売買代金を分割払いにすること自体は可能です。ただし、支払いを分ければ、売主の税金も各入金年へ自動的に分かれるわけではありません。

株式を最初に全部移転した場合には、頭金しか受け取っていなくても、原則として、その譲渡年に売買価格全体を基礎として課税関係を検討します。

また、株式を移転した後の売主は、会社の株主ではなく、買主から残代金を回収する債権者になります。

したがって、分割払いを採用するときは、株式の価格だけでなく、納税資金、利息、買主の返済能力及び残代金の保全まで決めておく必要があります。

結論―分割できるのは支払いであり、価格と課税が自動的に分かれるわけではない

分割払いを検討するときは、次の四つを分けます。

  1. 株式本体の価格
  2. 売主の課税時期
  3. 頭金、分割回数、利息などの金融条件
  4. 株式移転の時期と残代金の回収方法

買主が一括で支払えないことは、支払方法を検討する理由にはなります。しかし、それだけで株式の価値が下がるわけではありません。

まず、税務上確認する価額、経済価値及び取引条件を比較し、株式本体の価格を決めます。その後に、頭金、各支払日、利息、担保及び不履行時の処理を定めます。

売主の課税時期は、実際の入金日だけで決まりません。株式の引渡しがあった日などを基準として判断するため、未回収の残代金がある段階で納税が必要になる可能性があります。

なぜ非上場株式で分割払いが問題になるのか

非上場株式には市場で日々成立する価格がなく、買主も限られます。

後継者、役員又は既存株主が買主になる場合、株式の価値に見合う一括購入資金を用意できないことがあります。

この場合、買主が用意できる金額まで株価を下げる方法と、株式本体の価格を維持して支払いを分ける方法は、同じではありません。

株価を下げれば、税務上の時価や経済価値との差を説明する必要があります。個人間の売買では、買主が著しく低い価額で株式を取得したとして、贈与税の問題が生じる可能性もあります。

一方、価格を維持して分割払いにすれば、買主の当初の資金負担は軽くなりますが、売主が未払代金の回収リスクを負います。

分割払いは資金問題への一つの方法ですが、価格、税金及び回収の問題をなくす方法ではありません。

モデル取引―1億1,400万円の株式を頭金3,400万円、残額4回で支払う

次の架空の取引で考えます。

※スマートフォンでは、表を横にスクロールしてご覧いただけます。

項目 内容
発行会社非上場会社U社
発行済株式数2,000株
売主A個人。1,200株・60%を保有
買主BAと親族関係のないU社取締役。800株・40%を保有
売買後Bが2,000株・100%を保有
税務上確認する価額1株9万円、対象株式総額1億800万円
経済価値1株10万円、対象株式総額1億2,000万円
最終合意価格1株9万5,000円、1,200株で1億1,400万円

AとBは、税務上確認する価額、経済価値及び今回の取引条件を比較し、1株9万5,000円で合意しました。

支払条件は次のとおりです。

※スマートフォンでは、表を横にスクロールしてご覧いただけます。

項目内容
株式売買代金1億1,400万円
頭金3,400万円
未払残高8,000万円
分割払い毎年2,000万円を4回
利息未払残高に年1.5%
株式移転譲渡承認後、頭金支払日と同日に1,200株全部を移転

頭金支払日に株式を全部移転すると、BはU社の100%株主になります。Aには、Bに対する8,000万円の売買代金債権が残ります。

年1.5%は、このモデルの説明用に置いた利率です。すべての取引で年1.5%なら妥当又は安全という意味ではありません。実際の利率は、支払期間、信用力、担保、金利環境及び当事者関係などにより個別に検討します。

頭金3,400万円は、株式の売買価格ではない

本モデルの株式売買価格は、1億1,400万円です。

最初に受け取る3,400万円は、その一部である頭金です。残りの8,000万円も株式売買代金であり、支払期限が後になっているにすぎません。

この区別が曖昧になると、「買主が今払える金額」と「株式の価格」が混同されます。

契約書では、少なくとも次の金額を分けます。

支払期間、買主の信用力及び担保の有無は、当事者間の取引条件に影響します。ただし、後払いであることだけで税務上の時価が自動的に下がるわけではありません。

頭金しか受け取っていなくても、売買価格全体を基礎に課税されることがある

本モデルでは、3月31日にBが頭金3,400万円を支払い、Aから1,200株全部を取得します。その後、Bは翌年から毎年2,000万円ずつ、4回に分けて元本を支払います。

※スマートフォンでは、表を横にスクロールしてご覧いただけます。

時点出来事
3月20日株式譲渡契約を締結
3月25日U社が株式譲渡を承認
3月31日Bが頭金3,400万円を支払い、1,200株全部を取得
翌年3月31日第1回元本2,000万円と利息を支払う
2年後3月31日第2回元本2,000万円と利息を支払う
3年後3月31日第3回元本2,000万円と利息を支払う
4年後3月31日第4回元本2,000万円と利息を支払う

個人が株式を譲渡した場合、譲渡価額から取得費や譲渡費用などを控除して譲渡所得を計算します。

所得税基本通達36-12では、譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は、原則として資産の引渡しがあった日によるとされています。納税者が契約の効力発生日により申告した場合に、その選択が認められる取扱いもあります。

したがって、3月31日に株式全部がBへ移転したのであれば、Aは原則として、その年に1億1,400万円の譲渡価額を基礎として課税関係を検討します。

その年の入金額が3,400万円だからといって、譲渡価額も3,400万円になるわけではありません。

契約前には、頭金から納税資金を確保できるか、税金を支払った後もAの手元資金に問題がないかを確認します。

分割払いにしても、低額譲渡の確認は残る

買主の資金不足に合わせて株式本体の価格を下げることと、価格を維持して支払日を分けることは区別します。

本モデルでは、税務上確認する価額1株9万円、経済価値1株10万円及び取引条件を比較し、1株9万5,000円で合意しています。

これに対し、「Bが今用意できるのは3,400万円だから、1,200株全部を3,400万円で売る」と決めれば、税務上確認する価額や経済価値との大きな差が生じます。

個人が個人から財産を著しく低い価額で取得した場合には、時価と支払対価との差額について贈与税の問題が生じる可能性があります。

分割払いを採用しても、合意価格そのものの妥当性確認は残ります。売主又は買主が法人である場合には課税関係が異なるため、当事者ごとに確認が必要です。

利息は株式代金と分けて決める

8,000万円を4年間にわたって後払いにする場合、AはBから代金を待つことになります。この後払いには金融的な要素があります。

そこで、株式本体の価格とは別に、未払残高へ利息を付けるかを検討します。

本モデルでは年1.5%としていますが、これは安全基準ではありません。実際には、次の事情を踏まえて決めます。

契約書と支払記録では、株式売買代金、利息及び遅延損害金を区分します。

利息の所得区分と収入時期は、株式の譲渡所得とは別に確認します。無利息又は低利とする場合も、その条件が妥当かを個別に検討します。

株式を先に全部渡すと、売主は8,000万円の債権者になる

本モデルでは、頭金の支払いと同時に1,200株全部をBへ移転します。

Bは早期に100%株主となります。一方、Aは議決権を失い、Bから未払残高8,000万円を回収する立場になります。

株式を移転した後にBの支払いが止まれば、AはU社を支配していない状態で残代金の回収を求めなければなりません。

これに対し、支払いに合わせて株式を段階的に移転する方法も考えられます。ただし、各回の移転株数、価格、評価時点、議決権及び支配関係を設計する必要があります。

会社価値が途中で変われば、最初に決めた1株9万5,000円を後の譲渡にもそのまま使えるとは限りません。取引が複数回に分かれるため、譲渡承認などの手続も増える可能性があります。

段階移転は、税金を形式的に分けるための方法ではありません。実際の権利移転、支払い及び支配関係を一致させる必要があります。

回収できるかは「誰が何から払うか」から確認する

まず、Bが毎年2,000万円の元本と利息を何から支払うのかを確認します。

確認するのは、Bの自己資金、収入、保有資産、借入状況、U社から受け取る役員報酬や配当、その他の返済義務などです。

返済原資をU社からの配当に依存する場合には、U社が必要な利益を継続して確保できるか、分配可能額があるか、配当後も事業資金を維持できるかを検討します。

そのうえで、支払いが滞った場合に備えます。

ただし、契約書に「払わなければ株式を戻す」と書くだけで、必ず株式を取り戻せるとは限りません。

解除、期限の利益喪失、質権の設定・実行、株式の戻し方及び議決権の扱いは、弁護士と確認します。

また、後に売買代金が回収不能となっても、譲渡年の課税が当然に取り消されるわけではありません。「払われなければ税金も戻る」という前提では契約しないことが重要です。

譲渡承認と株主名簿の手続も別に行う

U社の株式が譲渡制限株式であれば、定款を確認し、必要な譲渡承認を受けます。

分割払いであることを理由に、会社法上の手続を省略できるわけではありません。

次の日付と手続を整理します。

契約書、会社の承認手続、株主名簿及び実際の資金移動を一致させます。

契約前に三つの方法を比較する

分割払いを決める前に、少なくとも次の三案を比較します。

※スマートフォンでは、表を横にスクロールしてご覧いただけます。

比較項目一括払い全株式を先に移転して分割払い支払いに合わせて段階移転
株式価格一括決済を前提に決定株式価格と後払い条件を区分各回の価格と評価時点を確認
課税時期一括決済時を中心に確認全株式の移転時を中心に確認各回の株式移転時を確認
支配権決済後に買主へ移る頭金支払時に全部移る持株割合に応じて変わる
売主の回収リスク比較的小さい未払残高について大きい未移転株式は残るが取引が長期化する
手続原則1回株式移転は原則1回、入金管理は複数回譲渡承認等が複数回必要になる可能性

どの方法が適しているかは、買主の資金調達能力、売主が許容できる回収リスク、支配権を移す時期及び税負担によって異なります。

分割払いの株式譲渡で残す資料

分割払いでは、価格だけでなく、納税、返済及び回収を説明できる資料を残します。

価格を説明する資料

納税と返済能力を確認する資料

契約と会社手続の資料

これらを残すことで、なぜ1株9万5,000円としたのか、なぜ分割払いを選んだのか、利息と担保をどう決めたのか、代金をどこまで回収したのかを後から説明できます。

まとめ―分割払いは資金問題への方法であり、価格と税金を分割する方法ではない

非上場株式の売買代金を分割払いにすることは、買主が一括購入資金を用意できない場合の選択肢です。

ただし、分割できるのは支払いであり、株式の価格と売主の課税が自動的に各年へ分かれるわけではありません。

買主の頭金だけを株式の価格にせず、税務上確認する価額、経済価値及び取引条件を比較して合意価格を決めます。

株式を先に全部移転する場合には、未回収の残代金がある段階で納税が必要になる可能性があります。売主は株主ではなく債権者になるため、買主の返済原資、利息、担保及び不履行時の処理も確認します。

価格、課税時期、金融条件及び株式移転を分けて検討し、最後の入金まで説明できる取引として設計することが重要です。

※本記事の会社、当事者、株数、金額、利率及び日付は、考え方を説明するための架空の設定です。実際の税務上の時価、譲渡所得の収入時期、利息の所得区分、低額譲渡・低額取得、譲渡承認、担保及び契約上の取扱いは、当事者の属性、契約内容、株式移転の実態、会社の定款及び個別事情によって異なります。

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