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GENERAL GUIDE 11

少数株主の株式は
配当還元価額で買い取ればよいのか

非上場会社の少数株主から株式を買い取るとき、「配当還元価額で評価できる株主だから、その金額で買い取ればよい」と考えることがあります。

配当還元価額は、一般に純資産価額や類似業種比準価額より低くなることが多く、少数株主との売買価格を検討する際にも候補として挙げられます。

しかし、配当還元価額で税務評価できることと、その金額が実際の買取価格として適正であることは別問題です。

買取価格を決めるときは、売主だけでなく買主の立場、取得後の支配関係、会社の資産・収益力、過去の取引価格なども確認する必要があります。

配当還元価額は相続税・贈与税のための評価額

配当還元方式は、非上場株式から受け取る配当に着目して株価を計算する方法です。

会社の純資産や将来の収益力を直接評価するのではなく、その株式に係る過去の配当金額を一定の利率で還元して価額を求めます。

会社を支配せず、経営への影響力も限られる株主にとっては、株式から得られる経済的利益が主として配当であるという考え方が基礎にあります。

相続税・贈与税における非上場株式の評価では、取得した株主の立場によって、原則的評価方式と配当還元方式を使い分けます。

ただし、これは相続または贈与によって取得した財産の課税価格を計算するための仕組みです。配当還元価額が算出されたからといって、それが当事者間の売買価格を当然に決めるわけではありません。

持株割合が低いだけでは判断できない

一般的には、発行済株式の数%しか保有していない株主を少数株主と呼ぶことがあります。

しかし、財産評価基本通達上、配当還元方式の対象になるかどうかは、本人の持株割合だけでは判断できません。

主に次の事項を確認します。

  • 会社に同族株主がいるか
  • 本人と同族関係者を合わせた議決権割合
  • 本人が属する株主グループ
  • 本人が会社の役員に当たるか
  • 中心的な同族株主との関係
  • 株式取得後の議決権割合

本人の持株割合が5%未満でも、親族などを含む株主グループで見れば会社を支配する側に属していることがあります。

したがって、「5%未満なら配当還元価額」「少数株主なら低い評価額」という一つの基準では決められません。評価時点の株主名簿、議決権割合、親族関係、役員関係を確認して判定します。

売主にとって少数でも、買主にとって重要な株式がある

買取価格を検討するときは、売主の現在の立場だけでなく、誰が株式を取得し、その結果どうなるかを確認します。

たとえば、会社を引き継ぐ後継者が兄弟から株式を取得し、その結果、議決権の過半数を確保する場合があります。

売主にとっては配当を受け取るだけの少数株式であっても、買主にとっては会社の支配権を取得または強化するために必要な株式かもしれません。

また、会社が自己株式として買い取れば、残った株主の議決権割合が相対的に上昇します。

このように、同じ株式でも、売主、買主、残る株主によって経済的な意味が異なることがあります。売主側の配当還元価額だけを見て、取引全体の価値を判断することはできません。

純資産価額やDCF等とも比較する

会社が配当をほとんど行っていなければ、配当還元価額は低くなりやすくなります。

しかし、配当が少ないことと、会社に価値がないことは同じではありません。

会社に多額の現預金、不動産、有価証券、利益剰余金などが蓄積していれば、純資産価額との間に大きな差が生じることがあります。

反対に、純資産価額が高くても、事業の収益力が低下していれば、将来キャッシュ・フローを基にするDCF法では低い株式価値になる可能性があります。

実際の買取価格を検討するときは、必要に応じて次の価額を比較します。

※スマートフォンでは、表を横にスクロールしてご覧いただけます。

確認する価額主に表しているもの
配当還元価額一定の少数株主についての相続税・贈与税上の評価額
純資産価額等会社の資産・負債などを反映した税務評価額
DCF等による株式価値将来の収益力などを反映した経済的価値
過去の売買価格過去の当事者、時点、目的、交渉を反映した実績価格

これらの価額は、それぞれ目的と前提が異なるため、一致するとは限りません。

最も低い価額を選ぶのではなく、今回の取引ではどの価額を参考にすべきか、その理由を検討します。

過去の買取価格や株主ごとの価格差を確認する

同じ会社の株式について過去の買取実績がある場合、その価格は重要な比較資料になります。

ただし、過去価格があるからといって、今回も同じ価格にしなければならないわけではありません。

過去の取引から現在までに、会社の利益、配当、純資産、保有資産、株主構成などが変わっている可能性があります。売主・買主、取引目的、取得後の支配関係が異なることもあります。

株主ごとに売買価格が異なること自体が、直ちに税務上の問題になるわけではありません。

一方、同じ時期の取引で、合理的な理由なく特定の株主だけを有利または不利に扱えば、価格差による利益移転が問題になる可能性があります。

過去価格や他の株主との価格が異なる場合には、次の点を説明できるようにします。

  • 会社の財務内容がどのように変わったか
  • 当事者と取引目的にどのような違いがあるか
  • 取得する株式数と議決権への影響
  • 使用した評価方法
  • 価格差を設けた理由

合意した価格と税務上の時価は別に確認する

非上場株式には市場価格がないため、最終的な売買価格は当事者間の交渉によって決まります。

売主が早期の換金を希望している、買主に資金制約がある、株式に譲渡制限があるといった事情が、交渉価格に影響することもあります。

ただし、当事者が合意し、契約書を作成して代金を支払えば、その価格が税務上も必ず認められるということではありません。

実際の売買価格が税務上の時価より著しく低い、または高い場合には、当事者の関係によって贈与税、所得税、法人税などの課税が生じる可能性があります。

したがって、次の二つを分けて検討します。

  1. 当事者がどのような条件で価格に合意するか
  2. その価格が税務上どのように扱われるか

配当還元価額を買取価格に採用する場合も、それが相続税・贈与税上の評価額であることを踏まえ、ほかの評価額との差、その価格を採用する理由、売主・買主双方の課税関係を確認します。

買取りの前に確認・保存する資料

  • 株主名簿と株主間の関係が分かる資料
  • 取引前後の持株割合・議決権割合
  • 直近数期の決算書と申告書
  • 配当実績
  • 株価算定資料
  • 過去の株式売買や自己株式取得の記録
  • 今回の買取目的と価格交渉の記録
  • 売買契約書と必要な社内決議資料

株価算定書だけを保存するのではなく、誰が、誰から、何の目的で、何株を、いくらで取得するのか、その価格をどのように決めたのかが分かる資料を残すことが重要です。

まとめ

配当還元価額は、一定の少数株主が相続または贈与によって非上場株式を取得した場合に用いられる税務評価額です。

しかし、その株主から株式を買い取るときの価格が、当然に配当還元価額になるわけではありません。

実際の買取価格を検討するときは、売主・買主の立場、取得後の支配関係、会社の純資産と収益力、過去の取引価格、今回の交渉条件を確認します。

配当還元価額とほかの評価額に差がある場合には、その理由を整理し、今回の価格を決めた過程を資料として残す必要があります。

当事務所では、配当還元方式の適用判定だけでなく、ほかの評価方法との比較、取引後の支配関係、売主・買主双方の税務、価格決定資料の作成まで一体として対応しています。

配当還元価額は有力な参考資料ですが、実際の買取価格は取引全体を確認して決めます。

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